【開催報告・伏見】朝食読書会『砂の女』(安部 公房) |名古屋で朝活!!朝活@NGO
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。・・・(新潮文庫の紹介文より抜粋)
読売文学賞、最優秀外国語文学賞(フランス)など受賞したロングセラーです。
管理人の読書メモ
たしかに、砂は、生存には適しない。しかし、定着が、生存にとって絶対不可欠なものかどうか。定着に固執しようとするからこそ、あのいとわしい競争もはじまるのではなかろうか?
「しかし、これじゃまるで、砂搔きをするためだけに生きているようなものじゃないか!」
「だって、夜逃げするわけにはいきませんしねえ・・・」
たしかに労働には、行先の当てなしにでも、なお逃げ去っていく時間を耐えさせる、人間のよりどころのようなものがあるようだ。
孤独とは、幻を求めて満たされない、渇きのことなのである。
感想など
本書を通して感じるのは、「生きる意味」への問いかけ。男の閉じ込められた空間・状況が象徴するのは、ある時には「仕事」や「職場」、ある時には「結婚生活」、または大きく捉えれば「国」や「時代」と言えると思います。
男は昆虫採集の「よろこび」として、「新種の発見」を挙げています。
それにありつけさえすれば、長いラテン語の学名といっしょに、自分の名前もイタリック活字で、昆虫大図鑑に書きとめられ、そして、おそらく、半永久的に保存されることだろう。たとえ、虫のかたちをかりてでも、ながく人々の記憶の中にとどまるとすれば、努力のかいもあるというものだ。
小説のラスト、砂の世界での男の選択も、自分の「承認欲求」を満たしたいがための結果では。そこには女や村人への愛情は見えてこず、ただただ「自己愛」が感じられるのですが、不思議と「生きがいを見つけたハッピーエンド」とも思えてきます。いかがでしょう。
もう一つのテーマが「自由とは何か」。どれだけ自分が「自由」に生き方を選択しているのか。来月の課題で、そのあたりを深めたいと思っています。
ということで、来月の課題はこちらの名著です。
- 作者: エーリッヒ・フロム,日高六郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1965/12/01
- メディア: 単行本
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