【開催報告・藤が丘】朝食読書会『中国と茶碗と日本と』(彭 丹)
今朝の朝食読書会は『中国と茶碗と日本と』(彭 丹)が課題でした。
国宝の茶碗は8つあり、そのうち5つが中国で作られたもの、1つが朝鮮半島で作られたものであり、日本で焼かれたものはわずかに2つ。日本の国宝なのに、なぜか?そして宋時代に作られた曜変天目茶碗は世界に3つしか残っていなく、すべて中国ではなく日本にある。なぜか?
ミステリー調で、茶碗を通して日本文化と中国文化に迫ります。
管理人の読書メモ
P.69 「侘び」が日本独自の文化だと教えられた私はここで疑問を感ぜざるをえない。なぜならば、「閑寂な風趣」は中国宋元時代の水墨画や漢詩などにもよく見られるものであるからだ。
P.81 珠光は、珠光青磁の灰黄色を借用して独自の茶の湯を創り上げた。あえていえば、珠光の侘び茶は、中国の下手物青磁の借用から生まれた日本人の創造である。
P.146 極言すれば、中国の茶道では、茶碗が茶を飲むための道具であり、茶のために茶碗が存在する。日本の茶の湯では、茶碗を賞玩するために茶の湯が存在する。
P.163 もし中国における文化の継承が、古いものが新しいものに取って代わられ跡形もなく消え去る革命形式でなければ、点茶法も消えず、天目茶碗も残ったままであったかもしれない。一方、もし日本の文化継承が中国のような革命形式であったら、天目茶碗も残らなかったかもしれない。
P.255 中国磁器を模倣しそこなった「不良品」から、茶人は「日本的」な陶器を創り出した。日本陶磁と中国陶磁の大きな違いがここから生じ、中国陶磁の借用から新たな創造が生まれたのである。
P.284 日本文化の多くは、外来文化の借用である。自らの内部から発祥した文化とは異なり、海の向こうからやってきたものだから、もとの姿が変えられ曖昧模糊になりがちである。しかし日本人は、曖昧模糊そのものを文化とする方法を創り上げたのである。すなわち、そこに新たな名前を付けることによって、それまでになかった意味と価値を新たに創り出し、文化という秩序の抽斗(ひきだし)の中に次々と入れてきた。
P.285 日本文化は古いものを繰り返し使い、そのたびにすこしずつ新しい創造を加えていく、という継承的改良的な創造法である。
感想など
美術館で見かける「茶碗」。正直その良さ、価値があまりよく分からずにいました。
本書では、中国で身分の低いものが使う「下手物」や、捨てられるような運命にあった茶碗も取り上げられ、それらが日本に渡って「茶の湯」文化の中で「唐物」と貴ばれ、大変な価値を持つに至った時代背景が謎解きのように明らかにされます。読んでみると、これがかなりスリリング。利休や織部のように、時には命を落とす原因にもなる茶碗について、自分にとって初めて手に取った本でした。
一般的なアート作品とは違って、誰が作ったか、ではなく、「誰が見いだして、誰の手によって伝えられたのか」が語られる国宝の茶碗。特に「曜変天目」は全くの偶然の産物であり、技巧を尽くしてできたものではないことなど、中国では隠したかったような、ある意味「失敗作」が、日本で国宝となるまでのストーリーには驚かされます。
日本文化には「本歌取り」など「見出す文化」「新たな価値を付ける文化」があって、茶碗はそれがよく表れたもののように感じました。
この春、東京では大規模な茶碗の企画展が2つあります。
◆「茶碗の中の宇宙」東京国立近代美術館
特に「特別展 茶の湯」では、本書で取り上げられた国宝の茶碗も展示されていて、オススメです。
◆来月の藤が丘は3月19日日(日)です。課題はこちら。
詳細はこちらから。
【募集開始・藤が丘】3月19日(日)『春宵十話』(岡 潔) |名古屋で朝活!!朝活@NGO - 名古屋で朝活!! 朝活@NGO|朝食読書会・もくもく勉強の会
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