【開催報告】『小倉昌男 祈りと経営: ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』(森 健) |名古屋で朝活!!朝活@NGO
今月の藤が丘、朝食読書会は『小倉昌男 祈りと経営』(森 健)が課題でした。経営者として、現在ではそのビジネスモデルが当たり前に普及した「宅急便」のサービスを始めた経営者 小倉昌男氏。
既存の運送業者や国の規制と闘って、民間企業による小口配送を全国に広げた開拓者というイメージとは少し違った家庭での顔、福祉事業に邁進した理由に切り込んで取材した本書。第22回小学館ノンフィクション大賞を受賞した一冊です。
管理人の読書メモ
P.146 〈震災に遭遇したのは未遭有の“ピンチ”ではありましたが、社員に対して平素からいっていた「世のため人のため」「サービスが先、利益は後」という理念経営を具体的な形で見せる機会でもありました。(中略)大きな決断にあたっては、「小倉さんだったらどうするだろう」と考えるのです。
P.153 福祉業界の人は『金儲けが悪』という考えがわりと多く、まずその前提の考え方かた変えないといけなかった。金儲けが汚いのではなく、必要なお金がないと事業も生活も続かないというところから教える必要があったのです。
P.168 障害者の給与を一万円から十万円にする。この作業所への啓発的な支援が出てきて、さすが経営者らしい福祉への関わり方だと思いました。
P.220 実際、父(小倉昌男)の視点というのは、必ず弱いものに惹かれていました。絶対強いものにはいかない。宅急便だって、ふつうの主婦とかの不便や不都合に目がいって、事業化に結びついたし、福祉財団だってそう。それは、自分も弱きものという自覚があったのかもしれない。
P.247 そのニーバーの祈りは世界的にこう伝えられている。
〈神よ
変えることができるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることができないものについては、それを受け容れるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ〉P.267 ふつうの訳でコールは『呼ぶ』という意味です。しかし、キリスト教でのコーリングには『自分の生きる意味』『神のお召し』といった特殊な意味もあるのです。自分が何のために生き、何をするのか。最近、私のコーリングは、そんな精神障害へのサポートではないかと感じるんです。
感想など
小倉昌男氏といえば『小倉昌男 経営学』などで知られる名経営者ですが、家庭の話題について本格的に語られるのは、本書が初めてかと思います。
著者の取材が進むごとに、家族についての新事実が明らかになると同時に、経営者であり、同時にキリスト教徒である小倉氏の生き方が浮かび上がってきます。クロネコヤマト「宅急便の父」であり、経営の一線を退いてからの各地の障害者施設、教会への支援、特に障害者が働く「スワンベーカリー」の設立など、福祉活動でも知られています。
本書は晩年、障害者の自立を小倉氏が支援した動機に迫るノンフィクションですが、ただ金銭的な援助というわけではなく、福祉施設の経営について勉強会を重ね、経営のノウハウも一緒に考えることで貢献したところが彼らしい。
一方で、家族への接し方、関わり方については、小倉氏本人が著したビジネス書、あるいは部下や周囲の方が見ていた小倉氏のイメージとは違った印象を受けるという点で全く新しい一冊です。特に妻・玲子、娘・真理との関係は、本書を読み進めるにつれ、次々に新事実、明らかにされることが多く、この本の評価はかなり分かれるのかも。ぜひ『小倉昌男 経営学』と併せて読んでいただきたい本です。
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