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名古屋で朝活!! 朝活@NGO|朝食読書会・もくもく勉強の会

朝活@NGOのブログ。 名古屋駅(名駅)・伏見・栄・藤が丘のカフェで「朝食読書会」「もくもく勉強の会」を定期的に開催しています。 ビジネス書著者を招いてイベントも開催。 朝時間を活用して、素敵な1日に!

【開催報告・藤が丘】『働かないアリに意義がある』長谷川 英祐 (著)

朝活@NGO 朝活 開催報告・藤が丘 朝食読書会 名古屋

 

働かないアリに意義がある (中経の文庫)

働かないアリに意義がある (中経の文庫)

 

  今月の藤が丘は『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐)が課題でした。

 北海道大学で進化生物学、動物行動学、行動生態学などを研究領域とする長谷川先生によるアリの研究を中心に、「真社会性」生物の生態を紹介した本。昆虫の話ながら、身につまされるようなエピソードも多く、楽しく読める一冊です。

 

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管理人の読書メモ

エサを見つけると仲間をフェロモンで動員するアリAが移動していると設定し、Aを追尾するワーカーには、Aのフェロモンを100%間違いなく追えるものと、一定の確率で左右どちらかのコマに間違えて進んでしまううっかりものをある割合で交ぜ、うっかりもの混合率の違いによってエサの持ち帰り効率はどう変わるかを調べたのです【図1】。するとどうでしょう、完全にAを追尾するものばかりいる場合よりも、間違える個体がある程度存在する場合のほうが、エサ持ち帰りの効率があがったのです。(中略)お利口な個体ばかりがいるより、ある程度バカな個体がいるほうが組織としてはうまくいくということです。

 

腰が軽いものから重いものまでまんべんなくおり、しかしさぼろうと思っているものはいない、という状態になっていれば、司令塔なきコロニーでも必要な労働力を必要な場所に配置できるし、いくつもの仕事が同時に生じてもそれに対処できるのです。よくできていると思いませんか? 面白いのは、「全員の腰が軽かったらダメ」というところで、様々な個体が交じり合っていて、はじめてうまくいく点がキモです。

 

ハウスではいつも狭い範囲にたくさんの花があるため、ミツバチたちは広い野外であちこちに散らばる花から散発的に蜜を集めるときよりも多くの時間働かなければならず、厳しい労働環境に置かれているようです。この過剰労働がワーカーの寿命を縮めるらしく、幼虫の成長によるワーカーの補充が間に合わなくなって、コロニーが壊滅するようです。実験的に検証された結果ではありませんが、ハチやアリにも「過労死」と呼べる現象があり、これはその一例なのではないかと思われます。

 

性能のいい、仕事をよくやる規格品の個体だけで成り立つコロニーは、確かに決まり切った仕事だけをこなしていくときには高い効率を示すでしょう。しかし、ムシの社会も、いつ何が起こるかわかりません。高度な判断能力をもたず、刺激に対して単純な反応をすることしかできないムシたちが、刻々と変わる状況に対応して組織を動かすためには、様々な状況に対応可能な一種の「余力」が必要になります。その余力として存在するのが働かない働きアリだといえるでしょう。

 

アリやハチのワーカーが社会をつくって他者のために働くのは、滅私奉公しているわけではなく、そうしたほうが自らの遺伝的利益が大きくなるからだと考えられます。その利益の根源が血縁度不均衡であるのか、グループをつくるメリットから来るのかはまだ明らかではありませんが、彼らは社会を維持するために働きつつ、同時に自分の利益をもあげています。

 

発見されているすべての生物が核酸(DNA、RNA)に書かれた遺伝情報をタンパク質に翻訳して生命活動を行うことなどから考えて、地球の歴史上、生命はたった1回しか現れなかったと考えられています。

 

多くの研究者(プロを含む)は、教科書を読むときに「何が書いてあるかを理解すること」ばかりに熱心で、「そこには何が書かれていないか」を読み取ろうとはしません。学者の仕事は「まだ誰も知らない現象やその説明理論を見つけること」なのにです。優等生とは困ったものだと「変人」である私は思います。

 

感想など

  アリを使った観察や実験で、特に面白く感じたテーマが2つあり、一つ目が「出来の悪い個体や、働き方のレベルの違うアリが混じっていた方が、かえって効率や持続性の点で有利である」ということ。実験で、正確に仲間の歩いた跡をトレースできるチームとうっかりものが混じったチームを比べると、後者のうっかりものが混じった方が多くの餌を持ち帰ることができるという結果となりました。うっかりもののお陰でショートカットを見つけやすいのでは、という考察があり、逆説的で面白い実験かと。

 生産性向上が叫ばれムダは徹底的に排除され、ミスや失敗が許されない風潮の中、この「ムダや余力の効用」が見直される実験結果には気付きが多いと感じます。

 もう一つは、いかに自分の遺伝子に近い子孫を残すかについて、アリやハチの戦術が徹底していたことでしょうか。生物は所詮遺伝子を運ぶヴィークルに過ぎないのかと思うと、社会の生々しい争いや男女のドラマなど、どこか滑稽でむなしく感じてしまいます。

 本書の魅力は、数々の実験や観察を根気強く続けた長谷川先生の人柄にもよるのだと思います。あとがきの文章が印象的でした。

 変わる世界、終わらない世界がどのようなものになっていくかは誰にもわかりません。しかし願わくは、いつまでも無駄を愛し続けてほしい。短期的な効率のみを追求するような世界にはなってほしくないと思います。ちっぽけなムシが示しているように、そういう世界は長続きしないかもしれませんし、なにより無味乾燥で、生きる意味に乏しいと思います。

 さらっと読めるボリュームなので、ぜひ手に取ってみてください。

皆さんからのおすすめ 

 今回は猫町倶楽部のタツヤさんにもご参加いただいた貴重な回。オススメはこちらです。

 

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