【開催報告・藤が丘】朝食読書会 『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』(岡 檀)
藤が丘の朝食読書会は、自殺率が低い自治体、海部町に取材した「生き心地の良い町」(岡 檀)が課題でした。
P.23 海部町は全国3,318市区町村の中で、8番目に自殺率の低い自治体であることがわかった。表1に、自殺率の低い順に1番目から10番目の自治体を示している。興味深いことに、海部町以外の9自治体すべてが、「島」だった。
自殺が低い町はどういう町なのか。読む前の予想とはちょっと違ったコミュニティの姿が浮かび上がって、「生き心地の良い」人づきあい、生き方のヒントになりそうです。
管理人の読書メモ
P.40 (赤い羽根募金に対して)すでに多くの人が募金をしましたよと言ってみたところで、「あん人らはあん人。いくらでも好きに募金すりゃええが。わしは嫌や」とはねつけられる。(中略)海部町ではそのような「文句言い」が少なくなく、行政の福祉担当者は手を焼くことになる。結果として、海部町の募金額は周辺地域の中でもっとも少ない。
P.41 (老人クラブに)隣人たちと連れだって入会したり、誰かに義理立てして入会したりという発想はまったくない。他の人が入ろうが入るまいがどうでもよい。(中略)赤い羽根募金と同様に、海部町の老人クラブ加入率は周辺地域の中でもっとも低い。
P.73 悩みやトラブルを隠して耐えるよりも、思いきってさらけ出せば、妙案を授けてくれる者がいるかもしれないし、援助の手が差し伸べられるかもしれない。だから、取り返しのつかない事態にいたる前に周囲に相談せよ、という教えなのである。「病、市に出せと、昔から言うてな。やせ我慢はええことがひとつもない」
P.111 前述の海部町民がいみじくも指摘したとおり、この町の人々は他者への「関心」が強く、ただしそれは「監視」とは異なるものである。
P.153 これらの結果を総合すると、日本の自殺希少地域の多くは、「傾斜の弱い平坦な土地で、コミュニティが密集しており、気候の温暖な海沿いの地域」に属していると解釈することができる。
P.177 私が、人々が「絆」「つながり」と呼んでいるものの本質やそれに対する人々の意識に、地域によって差異があるのではないかと考え始めた。
P.181 海部町は周辺地域で「幸せ」な人がもっとも少なく、「幸せでも不幸せでもない」人がもっとも多い。
感想など
同じ県内でも自殺の多い地域と少ない地域が分かれていて、そして自殺の少ない地域=自殺希少地域の研究はほとんどない。「コミュニティの特性と自殺率の関連」、ここが筆者の研究の原点です。
自殺率が低いと聞けば、まずは近所づきあいの濃さがポイントかと思えば、少し違うようです。
P.84 近所づきあいについて尋ねた質問に対し、「日常的に生活面で協力している」と答えた人の比率は、海部町が16.5%であったのに対し、自殺多発地域であるA町では44.0%と、海部町が大きく下回っている。では、海部町ではどのようなつき合いをしているのかと他の回答を見ると、「立ち話程度」と「あいさつ程度」のつきあいに集中している。つまり、隣人間でのコミュニケーションが切れているわけではないのだが、かなりあっさりとしたつき合いを行っている様子が見えてくる。
都市部とは違って、田舎では「絆」「つながり」が未だに残っています。特に、震災の後に「絆」という言葉をよく聞くようになりましたが、その中身が他人への純粋な「関心」 なのか、あるいはコミュニティの安定や自分本位の興味からくる「監視」となってしまうのか。同じ「絆」「つながり」が引き起こすまったく違った「関心」と「監視」、この辺りがコミュニティの「生きやすさ」と「生き辛さ」の分かれ目を感じました。
もうひとつ、海部町で特徴的なことに「幸せ」と感じている人の割合の低さがあって、これはかなり意外。
P.181 海部町は周辺地域で「幸せ」な人がもっとも少なく、「幸せでも不幸せでもない」人がもっとも多い。
仏教的、禅的に解釈すれば、どういう状況でも「あるがまま」の今を受け容れること。その結果が「幸せでも不幸せでもない」人がもっとも多いということでしょうか。面白いデータだと思いました。
BS-TBSで、この海部町の調査が番組として放送されるようです。
次回の #サタデードキュメント は
7月1日(土)午前10時から「『生き心地の良い町』を訪ねて~徳島・海部の人々」をお送りします。MBS毎日放送の作品です。ご期待下さい!https://t.co/wPT1xCxpzQ#サタドキュ #bstbs #中村雅俊 #徳島 #旧海部町 pic.twitter.com/C2dbz9KIKc
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