【開催報告・藤が丘】『春宵十話』(岡潔)|名古屋で朝活!!朝活@NGO
今朝の朝食読書会は数学者 岡潔のエッセイ『春宵十話』が課題でした。数学だけでなく、宗教・道徳観、教育、文学、芸術など、新聞紙上で幅広く語ったエッセイをまとめたものです。
管理人の読書メモ
P.33 私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。(中略)私についていえば、ただ数学を学ぶ喜びを食べて生きているというだけである。そしてその喜びは「発見の喜び」にほかならない。
P.53 職業にたとえれば、数学に最も近いのは百姓だといえる。種をまいて育てるのが仕事で、そのオリジナリティーは「ないもの」から「あるもの」を作ることにある。
P.57 宗教と理性とは世界が異なっている。簡単にいうと、人の悲しみがわかるというところに留まって活動しておれば理性の世界だが、人が悲しんでいるから自分も悲しいという道をどんどん先に進むと宗教の世界に入ってしまう。(中略)いいかえれば、人の人たる道をどんどん踏みこんでゆけば宗教に到達せざるを得ないということであろう。
P.79 私の祖父はこのことを十分よく知っていたと見えて、私の数えて五つの年から自分の死に至るまで、一貫して、「他を先にし自分を後にせよ」という道義教育を施した。
P.81 人の子を育てるのは大自然なのであって、人はその手助けをするにすぎない。「人づくり」などというのは思い上がりもはなはだしいと思う。
P.97 美が実在するというのはうそで、本当の美などはないのです。情緒があって美が外に出るのであって、外に美があって情緒で受けるのではないということです。
P.160 本だって読むことより読みたいと思うことのほうが大切なのです。
P.184 奈良の良いものを保存したいが、本当に良いものはちょっとしたところ、何でもないところにある。
感想など
数学を究めた岡潔のエッセイは、「学ぶ喜び」「道義の教え」などの彼らしい教育論も面白いし、漱石や芭蕉について、あるいは芸術への彼独特の見方もあって、タイトルのように春の夜、少しずつ読み進めるのにちょうどいい一冊だと思います。
個人の幸福の追求への偏りや人間としての成長、成熟を待てない社会への警鐘的なエッセイもあって、日々のあれこれをちょっと遠くから、あるいは高いところから俯瞰する視点を持つような読書体験になるのでは。
藤が丘ではオススメの本を持ち寄ってもらっています。今日はこちらです。
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