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【開催報告・藤が丘】12月18日(日)『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(伊藤 亜紗)

 

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)
 

  今朝の読書会は『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(伊藤 亜紗)が課題でした。

 著者は東京工業大学リベラルアーツセンター准教授で、専門は美学、現代アート。従来の福祉という視点とは少し違った本書を読むと、「見えること」「見えないこと」それぞれへの考え方がずいぶん変わったように思えます。

 「差異を面白がる関係」という表現に象徴されるような異文化交流の楽しさにも通じる文章は、目の見えない人に対してちょっと身構えたり、気をつかいすぎて緊張感のある態度とは全く違う、温かさを感じるものでした。

 

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管理人の読書メモ

情報ベースでつきあう限り、見えない人は見える人に対して、どうしたって劣位に立たされてしまいます。そこに生まれるのは、健常者が障害者に教え、助けるというサポートの関係です。福祉的な態度とは、「サポートしなければいけない」という緊張感であり、それがまさに見える人と見えない人の関係を「しばる」のです。

 

見えないからこその意味の生まれ方があるし、ときには見えないという不自由さを逆手にとるような痛快な意味に出会うこともあります。そして、その意味は、見える/見えないに関係なく、言葉でシェアすることができます。そこに生まれるのは、対等で、かつ差異を面白がる関係です。

 

富士山や月が実際に薄っぺらいわけではないことを私たちは知っています。けれども視覚がとらえる二次元的なイメージが勝ってしまう。このように視覚にはそもそも対象を平面化する傾向があるのですが、重要なのは、こうした平面性が、絵画やイラストが提供する文化的なイメージによってさらに補強されていくことです。

 

私たちは、まっさらな目で対象を見るわけではありません。「過去に見たもの」を使って目の前の対象を見るのです。

 

見えない人、とくに先天的に見えない人は、目の前にある物を視覚でとらえないだけでなく、私たちの文化を構成する視覚イメージをもとらえることがありません。見える人が物を見るときにおのずとそれを通してとらえてしまう、文化的なフィルターから自由なのです。

 

見えない人には「死角」がないのです。これに対して見える人は、見ようとする限り、必ず見えない場所が生まれてしまう。

 

先天的に見えない人の場合、こうした表/裏にヒエラルキーをつける感覚がありません。すべての面を対等に「見て」いるので、表は裏だし裏は表なのです。

 

自立とは依存先を増やすことである」と。自立というと、依存を少なくしていきゼロにすることだと思いがちです。しかし、熊谷さんはそうではないといいます。周りの人から切り離されることではなく、さまざまな依存可能性をうまく使いこなすことこそが、障害者の自立である、と

 

ソーシャル・ビューは、見えない人にとって新しいだけでなく、見える人にとっても新しい美術鑑賞なのです。いったいどんな意味に、どんな解釈に到達することができるのか。解釈には正解はありません。目的地を「目指す」のではなく「探し求める」この道行きは、筋書き無用のライブ感に満ちています。

 

鑑賞とは作品を味わい解釈することですが、鑑賞をさまたげる根強い誤解に、「解釈には正解がある」というものがあります。多くの人が「正解は作者が知っている」あるいは「批評家が正解を教えてくれる」と思っている。もちろん、好き勝手に解釈していいというものではないですが、だからといって自分なりの見方で見てはいけないと構えてしまっては意味がありません。

 

高齢になると、誰でも多かれ少なかれ障害を抱えるからです。障害を受け止める方法を開発することは、日本がこれから経験する前代未聞の超高齢化社会を生きるためのヒントを探すためにも必要です

 

感想など

 「見える」といっても、物事をありのままに捉えているとは限らないということを、改めて再発見。本書で例に挙げられる「富士山」や「月」は、立体だとは知っていても、思い浮かべるのはイラストや写真で見た2次元的な富士山や月ではないでしょうか。見える人にとってはそうした「文化的な刷り込み」が、本質的でありのままの対象の捉えことの邪魔をしているのかもしれません。

 また美術品を見える人、見えない人の5、6人のグループで鑑賞する「ソーシャル・ヴュー」という取り組み。見える人による一方的な解説ではなく、対話による鑑賞の面白さは、読書会にも通じるところがあります。

 「見えない」ことを「欠陥」ではなく「差異」と捉えて、悪い意味ではなく面白がる著者の態度こそ、障害者に限らず人と人の壁を無くす態度かと思えました。良書です。

 

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