【開催報告】『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?―――日本人が知らない本当の世界経済の授業』松村嘉浩
増補版 なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?―――日本人が知らない本当の世界経済の授業
- 作者: 松村嘉浩
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (4件) を見る
9月の栄、朝食読書会は『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?―――日本人が知らない本当の世界経済の授業』が課題でした。
主に経済の面での不安を、宗教、民族からアニメ、J–POP、現代アートまで幅広く援用して説明するストーリー。読みやすく、経済学というより松村氏流社会学的な一冊です。
【管理人の読書メモ】
P.52 モノの供給が容易になって、さらにはモノがあふれて《欲望が飽和する時代》を経済学は想定していなかったのです。
P.60 紅茶に砂糖を入れて飲むというのは、世界の覇権を握ったイギリス人が、いかに自分が金持ちかを誇示するためのステイタス・シンボルだったんです。世界の覇権を確立したイギリスが、世界の西の端のカリブ海で奴隷につくらせた砂糖と、東の端のインドでつくられた紅茶を輸入してきて、合体させたわけです。
P.94 “おじいさん・おばあさんが赤ちゃんに借金を押し付けて養ってもらっている”というふうにわかりやすくデフォルメすれば、みんなすぐにわかると思いますが、こういう社会の歪みというのは、ほとんどの人は本質的な原因が難しくてわからないので深く追求しないものなのです。
P.107 本来は社会を成長しない《新しい時代》に合わせる努力をすべきなんです。でも今さらそんなことをおじいさん・おばあさんに言えないし、かといって税金を上げるようなこともしたくないから、経済成長しちゃえばすべて解決するといって、すごい無茶をしちゃってるわけです。
P.127 キリスト教の宣教師と奴隷商人は癒着の関係だったからです。
P.130 中国がずっと世界で最大の帝国だったため、中国は世界で一番であるという“中華思想”があって、他の国はその下にあるという考えがあるのです。その序列からみると、中国が親分で、韓国・朝鮮は一番目の子分、ベトナムが二番目の子分で、日本は最下層の子分という感じなわけです。
P.140 これから来る成長しない《新しい時代》に適合するお手本を示すのは、支配層がモラルを持って腐敗せず、成長しなくても分配を比較的公平に行い、豊かな文化を育んでみんなが幸せに暮らせた江戸時代のような“定常的社会や経済”の実践経験を持つ日本人以外にはないと思うからです
P.215 こうしたアメリカの現代アートを主導したのが、第2次世界大戦の最中にアメリカに亡命してきた大勢のユダヤ系のアーティストたちだということです。彼らは、ユダヤ系なので抽象表現主義なのです。
P.248 目が飛び出るような値段がついている現代アートですが、逆に彼ら(ユダヤ系)のコンテクストに乗らないものはまったくと言っていいほど評価されず値段がつきません。
P.309 そして、日銀も日本軍の大本営発表と同じように、負けていないと言い張って、勝つまで戦争を継続し、追加戦力の投入を辞さない構えです。
感想など
「進撃の巨人」やブラック・アイド・ピーズ、「セックス・アンド・ザ・シティ」など、音楽や映画、アニメから現代アートまで、サブカルチャー的な話題も織り込みながら、少子高齢化、年金問題、マイナス金利、中東の歴史や宗教の対立、アート作品とテロなど、現代社会の課題を論じるもの。できない大学生に教授がなんとか分からせようとするストーリーなので、なんといっても読みやすい。
ちょうどNHKで『縮小ニッポンの衝撃』(NHKスペシャル2016年9月25日(日)
午後9時00分~ 、再放送9月28日(水)午前0時30分~)が放送され、本書の主なテーマとも合った内容でした。
なぜ、みんな《漫然と不安》なのかというと、まったく《新しい時代》にいるのに、今までどおりに生きようとする既得権益層が世の中を歪めているからなのですよ
経済というよりも社会学、政治の世界に突っ込んだ もの。著者のスタンス、視点は独特なので賛否両論あろうかと思いますが、課題先進国である日本の課題を改めて考える機会になると思います。特に若い世代の方、ぜひご一読を。