【開催報告】『愛するということ』 エーリッヒ・フロム|名古屋で朝活!!朝活@NGO
- 作者: エーリッヒ・フロム,Erich Fromm,鈴木晶
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1991/03/25
- メディア: 単行本
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伏見の朝食読書会は古典・ロングセラーから中心に選書。今月の課題は『愛するということ』(E.フロム)が課題でした。アメリカでの出版が1956年、日本でも長く読み継がれている名著です。
管理人の読書メモ
P.25 どの時代のどの社会においても、人間は同じ一つの問題の解決に迫られている。いかに孤独を克服するか、いかに合一を達成するか、いかに個人的な生活を超越して他者との一体化を得るか、という問題である。
P.31 たいていの人は、集団に同調したいという自分の欲求に気づいてすらいない。誰もがこんな幻想を抱いている――私は自分自身の考えや好みに従って行動しているのだ、私は個人主義者で、私の意見は自分で考えた結果なのであり、それがみんなの意見と同じだとしても、それはたんなる偶然にすぎない、と。
P.34 現代の大量生産が商品の標準化を必要としているように、現代社会の仕組みは人間の標準化を必要としている。そしてその標準化が「平等」と呼ばれているのだ。
P.40 愛においては、二人が一人になり、しかも二人でありつづけるという、パラドックスが起きる。
P.42 愛は能動的な活動であり、受動的な感情ではない。そのなかに「落ちる」ものではなく、みずから「踏み込む」ものである。愛の能動的な性格を、わかりやすい言い方で表現すれば、愛は何よりも与えることであり、もらうことではない、と言うことができよう。
P.45 物質の世界では、与えるということはその人が裕福だということである。たくさん持っている人が豊かなのではなく、たくさん与える人が豊かなのだ。
P.46 もらうために与えるのではない。与えること自体がこのうえない喜びなのだ。
P.57 成熟した人間とは、自分の力を生産的に発達させる人、自分でそのために働いたもの以外は欲しがらない人、全知全能というナルシシズム的な夢を捨てた人、純粋に生産的に活動からのみ得られる内的な力に裏打ちされた謙虚さを身につけた人のことである。
P.94 隣人を一人の人間として愛することが美徳だとしたら、自分自身を愛することも美徳であろう。
P.143 たがいの性的満足としての愛と、「チームワーク」としての愛、あるいは孤独からの避難所としての愛は、どちらも、現代西洋社会における崩壊した愛、すなわち現代社会の特徴である病んだ愛の、「正常な」姿なのである。
P.151 現代人は過去か未来に生き、現在を生きていない。
P.166 毎日決まった時間に起き、瞑想するとか、読書するとか、音楽を聴くとか、散歩するといった活動に一定の時間を割き、推理小説を読むとか映画を観るといった逃避的な活動には最低限しかふけらず、暴飲暴食はしない
P.170 集中するとは、いまここで、全身で現在を生きることである。
P.179 人を愛するためには、ある程度ナルシシズムから抜け出していることが必要であるから、謙虚さと客観性を理性を育てなければならない。
P.184 愛に関していえば、重要なのは自分自身の愛にたいする信念である。つまり、自分の愛は信頼に値するものであり、他人のなかに愛を生むことができる、と「信じる」ことである。
P.189 つまり、人は意識のうえでは愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識のなかで、愛することを恐れているのである。愛するということは、何の保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。
P.193 資本主義以前の社会では、物の交換は、権力とか、伝統とか、愛や友情といった個人的な絆などによって決定された。資本主義社会において、すべてを決定する要因は、市場における交換である。
感想など
「愛」という普遍的なテーマで、個人的な体験についての考えを深める読み方もできるし、社会情勢や民主主義・資本主義、宗教観のパラダイムチェンジという視点で読んでも意義深く、重層的に楽しめる本です。今朝のディスカッションでは、
・漠然とした思いが、言葉で整然と語られていて納得することが多い。
・アドラー心理学との共通点と相違点など考えながら読んだ。
・ナチスによる支配も間違った意味での「愛」に基づくもので、その反省から本来あるべき愛の姿を説いた本。
・フロムの言う「自己愛」と「ナルシシズム」の違いなど印象的。
・来日したウルグアイのムヒカ大統領がまさに体現しているような箇所があったり、共感する部分が多かったけど、実践は難しいそう。
・西洋哲学と東洋思想両面からの視点がある。
など、多様な意見。
ディスカッションでも紹介されましたが、こちらの名著も個人と社会の関わり合いを語る上で極めて今日的な課題を提起していて、併せておすすめです。