【開催報告】『旅をする木』(星野道夫)|名古屋で朝活!!朝活@NGO
7年目に入った朝活@NGO、今月の藤が丘は写真家 星野道夫の『旅をする木』が課題でした。アラスカに移り住んで活動していた星野氏ですが、今年が没後20年の節目ということで、メディア等で再び注目されています。
管理人の読書メモ
P.33 カリブーの仔どもが寒風吹きすさぶ雪原で生み落とされるのも、一羽のベニヒワがマイナス50度の寒気の中でさえずるのも、そこに生命の持つ強さを感じます。けれども、自然はいつも、強さの裏に脆さを秘めています。そしてぼくが魅かれるのは、自然や生命のもつその脆さの方です。
P.36 私たちには、時間という壁が消えて奇跡が現れる神聖な場所が必要だ。今朝の新聞になにが載っていたか、友達はだれなのか、だれに借りがあり、だれに貸しがあるのか、そんなことを一切忘れるような空間、ないしは一日のうちのひとときがなくてはならない。
P.118 ひとつの体験が、その人間の中で熟し、何かを形づくるまでには、少し時間が必要な気がするからだ。
P.123 「東京での仕事は忙しかったけれど、本当に行って良かった。何が良かったかって?それはね、私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知ったこと……」
P.135 人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で、無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根源的な悲しみは、言いかえれば、人と人とが出会う限りない不思議さに通じている。
P.168 バスを一台乗り遅れることで、全く違う体験が待っているということ。人生とは、人の出会いとはつきつめればそういうことなのだろうが、旅はその姿をはっきりと見せてくれた。
P.175 「いいか、ナオコ、これがぼくの短いアドバイスだよ。寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人とを近づけるんだ」
P.176 人生の風景の面白さとは、私たちの人生がある共通する一点で同じ土俵に立っているからだろう。一点とは、たった一度の一生をより良く生きたいという願いであり、面白さとは、そこから分かれてゆく人間の生き方の無限の多様性である。
P.187 私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、終わりのない日々の選択である。生命体の本質とは、他者を殺して食べることにあるからだ。
P.213 「…テレビのスイッチをひねったり、友だちに電話をかけたりしてね。その孤独と向き合わないさまざまな方法があるから……でもここではそれができない。その代わり、その孤独を苦しみ抜いてしか得られない不思議な心の安らぎがあったの……」
感想など
多くの写真作品とともに、本作のようなエッセイも多く残した星野氏。動物、生き物とともにそれを取り囲む大自然をテーマにした写真集が多く、第3回アニマ賞、第15回木村伊兵衛写真賞、1999年度日本写真協会賞・特別賞など数々の受賞歴もあります。
極北の厳しい自然に囲まれて活動していた星野氏のエッセイは、穏やかで温かく、そしてそこに暮らす人との交流や自分の心を見つめるものがたくさんあります。長い孤独な時間を過ごすからこそ、人に対して愛情に満ちた優しい思いが自然と湧いてくるのではないでしょうか。
参加者のオススメ
藤が丘では参加者の皆さんに本を1冊紹介してもらっています。今回のおすすめはこちらです。
宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか (ちくま文庫)
- 作者: 宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1985/12
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
『ガケ書房の頃』(山下賢ニ・夏葉社)