【開催報告】『李白』(角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)|名古屋で朝活!!朝活@NGO
李白 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
- 作者: 筧久美子,谷口広樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/10/25
- メディア: 文庫
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伏見の朝食読書会は古典・ロングセラーから中心に選書。今回の課題は角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックシリーズから『李白』でした。「漢詩を読むのは学生の時以来」という参加者が中心で、改めて漢詩の響きや詩情を味わう機会となりました。
管理人の読書メモ
南北漫遊(北から南まで好きなように歩き回り、)
求仙訪道(仙人や道士を尋ねて道教の奥義を求め、)
登山臨水(山に登り水辺に遊び、)
飲酒賦詩(酒を飲み詩を作る。)
李白を称したこの四字四句は、なるほど、彼の一生の特色を、実にうまくまとめたものだと感心させられます。
「李白の詩は、十のうち九までが酒と女を歌ったもので、識見汚下(下品で、知性的でない)」と批判されています。そうした批判は根強く続きますが、それにもかかわらず、より多くの人に愛される部分は、人間の本音や庶民的な生活感情を、多彩かつ抒情的に歌ったこの種の楽府詩なのです。
李白が、山にこもる暮らしを美化するのは、幼時からなじんだ道家的生活へのあこがれがあったからですが、それにもまして「人間(じんかん・政界や俗世間)」からの退却と逼塞を余儀なくされて、疲れた翼を休める隠れ家としたかったからでしょう。
感想など
ディスカッションでは、
・純粋に詩としての文学的な味わい
・身分や地域を超えて活躍した「食客」として、詩人「李白」が果たした社会的・政治的な役割
・「酒」「女」「月」「故郷」を諸国漫遊しながら詠んだ李白の人となり
・日本文化・文学への影響
など。学校の教科書ではなく詩として向き合うと、豊かな情景や庶民、特に女性の心情、郷愁や孤独など心に沁みる作品が多く、有名な『月下独酌』などは李白のように酒を飲みながら読み返したい詩でした。
「詩仙」と称えられる李白ですが、文学的な意味合いだけでなく、遠方の地域に関する知識や庶民の生活への理解など、当時の権力者が「食客」として李白を必要とする視点も知れて、広がりのあるディスカッションでした。このあたりは日本各地を諸国行脚していた僧侶や、古来日本で見られた「まれびと」を歓迎する風習にも通じるように感じました。
個人的には、李白が日本文化に与えた影響に興味があり、身近なところで国宝「犬山城」が別名「白帝城」で、それは李白の『早発白帝城』(つとにはくていじょうをはっす)に由来していることなども新たな気づき。
また、好きな詩として挙げられた『静夜思』から、百人一首にも選ばれた和歌への影響も感じられました。
『静夜思』
牀前看月光
疑是地上霜
擧頭望山月
低頭思故郷牀前(しょうぜん) 月光を看る
疑らくは是れ地上の霜かと
頭(こうべ)を挙げて 山月を望み
頭を低(た)れて 故郷を思ふ
朝ぼらけ 有明の月と みるまでに
吉野の里に ふれる白雪
ー 坂上是則(百人一首 31番・『古今集』より)【意味】明け方の空がほのかに明るくなってきた頃、有明の月かと思うほど明るく、吉野の里に白々と雪が降っている。
ディスカッションで本来の中国語の響きも話題になりましたが、こちらのサイトで音声が聴けます。
⇒ 李白 漢詩の朗読
同時代の杜甫などもビギナーズ・クラシックでは刊行されているので、またいつか採りあげたいと思います。