【開催報告・名駅】『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』鴻上 尚史 |名古屋で朝活!!朝活@NGO
不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)
- 作者: 鴻上尚史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/11/15
- メディア: 新書
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このところ初参加の方や久しぶりの方が続いている朝活@NGO。初めて同士の方が多いのも嬉しいですね。
今朝の課題は、先月のおすすめ本の会で紹介いただいた『不死身の特攻兵』(鴻上尚史)が課題でした。偶然ですが、藤が丘、栄の平田オリザさんに続いて劇作家による新書。内容も響き合うところがあります。
特攻隊自体は、爆弾を満載して敵艦に突っ込む、くらいのイメージしかありませんでしたし、当然、「出撃命令=死」と思っていたので、当時の軍隊で9回も特攻兵として出撃命令を受けたにも関わらず、その度に生還し続け戦後を迎え、なおかつ最近までご存命だった方がいたというのはそれだけで驚き。
とにかく飛行機に乗ることが好きで、人一倍訓練に没頭し、若くして上官に目を掛けられるまでになった佐々木友次さん。優秀だったが故に、陸軍の第1回特攻隊に選抜されました。軍としては、何がなんでも成功例を作りたかったのですね。
特攻を命じられたものの、佐々木さんは飛行技術に自信があったので、爆撃を成功させて、また還ってくる自信があったし、その方が味方にとってもダメージがなく効率よく攻撃できるという信念を曲げません。
《「そんなに命が惜しいのか。いかなる理由があろうと、突入の意思がなかったのは明白である。死んだ仲間に恥ずかしくないのか」》P.9
《猿渡大佐が佐々木に向かって「どういうつもりで帰ってきたのか?佐々木は死ぬのが怖くなったのではないか」と詰問した。
佐々木は「犬死しないように、やりなおすつもりでした」と答えた。》P.101
罵声を浴び続けながら、彼は淡々と答えます。
《(佐々木)「私は必中攻撃でも死ななくていいと思います。その代わり、死ぬまで何度でも行って、爆弾を命中させます」》P.109
理論的には佐々木さんの方に理がありますが、軍隊の雰囲気はそれを許しません。「空気を読む」ことが「日本人の美徳」という考え方は、今でも根強いです
そんな空気感の中でも、理解ある上官やさまざまな偶然も手伝い、結果として佐々木さんは生き延びます。
本書の面白さは、「狂気の時代の狂人たち」が理不尽な命令を繰り返す中で、声を上げてそれに「抵抗し続けた人」がいた、というだけではないと思います。
現在もまた、同じような理不尽さはあらゆる組織の中で見られるものだし、誰もがその「狂気」の側になる得るというところに気づかされる点が、本書の深みかと。
平成最後の夏、こうした語り部の声に耳を傾けるのもよいのでは。「理不尽」な「空気」に簡単に流されないためにも。良書です。
不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)
- 作者: 鴻上尚史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/11/15
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