【開催報告・藤が丘】『ヴェネツィアの宿』(須賀敦子)|名古屋で朝活!!朝活@NGO
今月の藤が丘は『ヴェネツィアの宿』(須賀敦子)が課題でした。
イタリアでの生活を綴ったエッセイが多い中で、これは日本での家族・親族の思い出や寄宿学校でのこと、特に父母への複雑な思いなどが軸になっていて、留学時代やイタリアでの生活は他のエッセイ集より少な目です。
情景が目に浮かぶような名文で語られる思い出の数々から、彼女の人生哲学を形作った人や言葉への敬意を感じられます。彼女自身が発した言葉よりも、彼女にかけられた言葉の方が印象深いかも。
「古典をお読みなさい。ホーマーとか、ダンテとか、シェクスピアとか。『風と共に去りぬ』はそれからでじゅうぶん」
「ヨーロッパにいることで、きっとあなたのなかの日本は育ちつづけると思う。あなたが自分のカードをごまかしさえしなければ」
「自分がカテドラル(大聖堂)を建てる人間にならなければ、意味がない。できあがったカテドラルのなかに、ぬくぬくと自分の席を得ようとする人間になってはだめだ」
「このところ、自分の生き方をさぼっているみたいなおまえを見ていると、わたしはなさけなくなるわ」
彼女の中に残る言葉は厳しいものも多いのですが、きっとこうした言葉が彼女を磨き、翻訳や創作に向かわせたのでしょう。
さまざまな感情が錯綜する父母との関係と、「自分というものを、周囲にむかってはっきりと定義し、それを表現しつづけなければならない」ヨーロッパでの生活。須賀敦子の美文とともに、彼女の人生そのものが深く味わえる一冊だと思います。
【みなさんのおすすめ】
課題本からの連想で持ち寄られた本がほとんど。でも、一冊の本から十人十色のインスピレーションが生まれるんですね。
- 作者: マルグリット・ユルスナール,多田智満子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2008/12/16
- メディア: 単行本
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