【開催報告・伏見】朝食読書会 『茶の本』 岡倉 覚三(岡倉 天心)|名古屋で朝活!!朝活@NGO
今朝は朝活@NGOでは3度目の『茶の本』が課題でした。当時、欧米に向けて、日本を紹介する英語での出版としては『武士道』や『代表的日本人』とならぶ名著かと。
【管理人の読書メモ】
P.21 茶道の要義は「不完全なもの」を崇拝するにある。いわゆる人生というこの不可解なもののうちに、何か可能なものを成就しようとするやさしい企てであるから。
P.23 西洋人は、日本が平和な文芸にふけっていた間は、野蛮国と見なしていたものである。しかるに満州の戦場に大々的殺戮を行い始めてから文明国と呼んでいる。(中略)もしわれわれが文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとすれば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう。われわれはわが芸術および理想に対して、しかるべき尊敬が払われる時期が来るのを喜んで待とう。
P.39 今や茶は生の術に関する宗教である。茶は純粋と都雅を崇拝すること、すなわち主客協力して、このおりにこの浮世の姿から無常の幸福を作り出す神聖な儀式を行う口実となった。
P.45 道教は浮世をこんなものだとあきらめて、儒教徒や仏教徒とは異なって、この憂き世の中にも美を見いだそうと努めている。
P.49 禅の東洋思想に対する特殊な寄与は、この現世の事をも後生のことと同じように重く認めたことである。
P.58 芸術が十分に味わわれるためにはその同時代の生活に合っていなければならぬ。それは後世の要求を無視せよというのではなくて、現在をなおいっそう楽しむことを努むべきだというのである。
P.72 原始時代の人はその恋人に初めて花輪をささげると、それによって獣性を脱した。彼はこうして、粗野な自然の必要を超越して人間らしくなった。彼が不必要な物の微妙な用途を認めた時、彼は芸術の国に入ったのである。
感想など
シンプルな生き方が見直されている現代こそ、読み返す価値のある一冊では。茶道にからめて老荘思想や禅、茶室や花、芸術論などが語られていて、単に茶の湯を紹介するにとどまらず、日本人の持つ美点や精神性を欧米に広く紹介しようという意図が明確に伝わる文章です。
岩波文庫の「はしがき」は弟の岡本由三郎によるもので、兄の著作に誇りをもって、
…茶の会に関する種々の閑談やら感想やらを媒介として人道を語り
老荘 と禅那 とを説き、ひいては芸術の鑑賞にも及んだもので、バターの国土の民をして、紅茶の煙のかなたに風炉釜 の煮えの別天地のあることを、一通り合点 行かせる書物としては、おそらくこれを極致とすべきかと、あえて自分は考えるが、…
と書いています。「おそらくこれを極致とすべき」とまで称賛していて、実際、今に至るまで読み継がれています。
先々のことではなく、「今」この瞬間を大切に生きるという考え方は、禅にも通じるものですが、日々の生活の中では案外意識できないのではないでしょうか。お茶を楽しむ時間も欲しいですね。
P.30 まあ、茶でも一口すすろうではないか。明るい午後の日は竹林にはえ、泉水はうれしげな音をたて、松籟はわが茶釜に聞こえている。はかないことを夢に見て、美しい取りとめもないことをあれやこれやと考えようではないか。
茶の湯では、以前に課題にしたことのあるこちらのエッセイも読みやすく、茶道の魅力が伝わってきておすすめです。
日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)
- 作者: 森下典子
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