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【開催報告・藤が丘】朝食読書会『「空気」の研究』(山本七平) |名古屋で朝活!!朝活@NGO

 

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

 

  今月の藤が丘は『「空気」の研究』(山本七平)が課題でした。

 今年前半の報道で「忖度(そんたく」の文字を連日のように目にしたり、少し前のNHKでインパール作戦が特集されたり、あるいは大企業の組織ぐるみの不祥事、コンプライアンスの問題であったり、その場の「空気」で決定されることは国のトップレベルから身近な職場まで日常的に見られる光景かと思います。

 最近の文庫本の帯もこんな感じ。

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 なぜ日本では「空気」に支配されることが多いのか、そのしくみや歴史的背景を戦時中の事例や昭和の公害問題などにより解明します。

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管理人の読書メモ

P.15 採否は「空気」が決める。従って「空気だ」と言われて拒否された場合、こちらにはもう反論の方法はない。人は、空気を相手に議論するわけにはいかないからである。

 

P.16 大和の出撃を無謀とする人びとにはすべて、それを無謀と断ずるに至る細かいデータ、すなわち明確な根拠がある。だが一方、当然とする方の主張はそういったデータ乃至根拠は全くなく、その正当性の根拠は専ら「空気」なのである。

 

P.51 たとえば、一人の人を、「善悪という対立概念」で把握するということと、人間を善玉・悪玉に分け、ある人間には「自己のうちなる善という概念」を乗り移らせてこれを「善」と把握し、別の人間には「自己の内なる悪」という概念を乗り移らせてこれを「悪」と把握することとは、一見似ているように見えるが、全く別の把握の仕方である。

 

P.69 (一神教の世界では)「絶対」といえる対象は一神だけだから、他のすべては徹底的に相対化され、すべては、対立概念で把握しなければ罪なのである。

 

P.70 簡単にいえば、経済成長と公害問題は相対的に把握されず、ある一時期は「成長」が絶対化され、次の瞬間には「公害」が絶対化され、少したって「資源」が絶対化されるという形は、「熱しやすくさめやすい」とも「すぐ空気(ムード)に支配される」とも「軽佻浮薄」ともいえるであろうが、後でふりかえってその過程を見れば、結構「相対化」したような形になりうる世界である。

 

P.91 ある一言が「水を差す」と、一瞬にしてその場の「空気」が崩壊するわけだが、その場合の「水」は通常、最も具体的な目前の障害を意味し、それを口にすることによって、即座に人びとを現実に引きもどすことを意味している。

 

P.127 情況倫理という日常性は、否応なくここへ行きつき、ここに到達して一つの安定をうる。「一人の絶対者、他はすべて平等」の原則。

 

P.170 戦後の一時期われわれが盛んに口にした「自由」とは何であったかを、すでに推察されたことと思う。それは「水を差す自由」の意味であり、これがなかったために、日本はあの破滅を招いたという反省である。

 

P.218 公害問題が華やかだったとき、「経団連」をデモ隊で囲んで「日本の全工場をとめろ」といった発言に対して、ある経済記者が「一度やらせればいいのさ」と投げやりな態度で言った例にその実感がある。これは、臨在感的把握に基づく行為は、その自己の行為がまわりまわって未来に自分にどう響くかを判定できず、今の社会はその判定能力を失っているの意味であろう。

 

感想など

 本書で語られる戦時や公害の例は、そのまま現代でも当てはまる事象が多く、身近な職場でも「空気の支配」は見られるのでは。

 絶対的な「空気」支配を破るのに「水を差す」と言葉で表現されるような率直な意見が出てきて、課題が相対化されればよいのですが、その「水を差す自由」をどう確保すればよいのか。

 社会において一神教的な「絶対」が有効なのなら、組織でいえば絶対的な「社是」「クレド」「ビジョン」などがあれば、そこに立ち返って課題解決を図ることもできそうです。身の回りの「空気支配」について考える、よい一冊だと思います。

 今月25日(月)の栄も同じ課題ですので、ご興味ある方はぜひそちらも。

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