【開催報告・藤が丘】朝食読書会『成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法』 (加藤洋平)
成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法
- 作者: 加藤洋平
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2017/06/15
- メディア: 単行本
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子どもの精神的な発達については古くから研究がありますが、今回取り上げた「成人発達理論」は比較的新しいジャンル。
『ライフシフト』に象徴されるように寿命の伸びを考えると、今まで以上に生涯学習は今後注目されるはず。キャリアについても、一つの企業で一生過ごして終わり、ということはなくなりつつある現状で、この「成人発達理論」の注目度はこれから上がると思われます。
管理人の読書メモ
P.84 発達範囲は、年齢を重ねるごとに両者(最適レベルと機能レベル)の溝が拡大していくのです。つまり、私たちは大人になったからといって、他者から支援を必要としないのではなく、それよりもむしろ、高度な能力を獲得していくためには、他者からの支援が常に不可欠なのです。
P.97 結論から先に述べると、私たちのいかなる能力も、点から線へ、線から面へ、面から立体へ、その立体が再び一つの点となり新たな線へ、線から面へ・・・というサイクルで成長していくのです。この様子はまさに、部分と全体が同じ形であるという「フラクタル構造」を示しています。
P.116 私たちが成長をしていくためには、実社会に関与し、実体の伴った具体的な実践を社会の中でしていく必要があるのです。個人が自分のさらなる成長を求めるのであれば、社会という環境に積極的に関与し、その中で具体的な課題に従事することによって、「点」としての能力を確固たるものにしていくことが何よりもまず求められるのです。
P.172 端的に述べると、「抽象性」が高まるというのは、実際の現場での「再現性」が高まるということを意味します。例えば、「リーダーシップの持論」という抽象的なレベルでの理論をしっかりと身につけている人とそうでない人との間には、リーダーシップのパフォーマンスに大きな差がつくのものです。
P.212 また、指導者や人材育成の立場にいるのであれば、実際の現場と練習内容がどのような関係になっているのかを絶えず自問し、生態学的妥当性が高いトレーニングをていきょうしていくことが重要になります。
P.243 要するに、支援者の力量は、実践者の「can't do」を「can do」に変化させるだけではなく、その実践者のさらなる成長につなげるための、適切な「can't do」を適切な支援とともに提供できるかどうかにあるのです。
P.257 マインドフルネス瞑想の本来の目的は、毎日を「深く」生きることにあるのであって、決して毎日を「多く」生きることではない、ということです。
P.285 経験を抽象化することによって、再現性のある持論が形成されていき、それを新たな経験と照らし合わせながら持論を磨いていく作業を継続することによって、経験が真の意味で「深化」していくのです。
感想など
・反復練習、研修や本で学ぶことと、実際のスポーツ、仕事とのギャップは意識したい。実践をイメージできているか。
・具体的であることが求めれらる場面が多いが、再現性を高めたければ抽象化や言語化が大切。
・「成長レシピ」に即して書き出してみると、仕事の場面で使うイメージが見えてくる。
・本自体、振り返りや書き出しができる構成で、理解の深まる工夫がされている。
全体を通じて、「スキル」「能力」の向上の意味するものが、単に「数字を上げる」「できることを増やす」といった機械的、量的なものだけでなく、人的な「深み」「質」にも注目した本質的な人間的成長につながるものだと感じました。それがそのまま、この本の深みのように思えました。
P.142 また、企業経営を単純に財務数値で評価する時、経営者の思想の深さや経営内容が持つ社会的な意義の深さなどが無視されがちです。私たちは、単純に量を重視する発想から脱却し、質的なものを見逃すことなく、質的に異なるものを正しく評価する時期にあるのではないでしょうか。
浅いノウハウ本とも違い、また学問を追究するだけの本とも違って、深い内容を「要点メモ」で振り返りつつ「成長レシピ」でワークをこなしながら理解できます。「コラム」も著者の体験談も交えながら身近なテーマが多くて、高度な内容にも関わらず、読みやすくまとめてある一冊です。
前作のR.キーガンとは違って、K.フィッシャー教授の実証研究の紹介というのも、日本では初めての一般書ではないでしょうか。前作とともに、これから注目されそうですね。
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