【開催報告】『おおきな木』 シェル・シルヴァスタイン|名古屋で朝活!!朝活@NGO
- 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,村上春樹
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: ハードカバー
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伏見の朝食読書会は古典・ロングセラーから中心に選書。今月の課題は『おおきな木』(シェル・シルヴァスタイン)でした。アメリカでの出版は1964年。日本でも本田錦一郎の訳で読み継がれてきましたが、2010年に村上春樹の新訳が出版され話題となりました。
このりんごの木は最初から最後まで、一人の少年に何かを与え続けます。木は原文では「彼女」と書かれています。つまり女性なのです。
あなたはこの木に似ているかもしれません。あなたはこの少年に似ているかもしれません。それともひょっとして、両方に似ているかもしれません。あなたは木であり、また、少年であるかもしれません。(ともに「訳者あとがき」より)
「受け取り続ける少年」と「与え続ける木」は、ともにその事を欲し、お互いを必要とします。一見いい関係性に思えますが、現実的にはどちらも成長し切れない印象があり、何とも言えない複雑な気持ちになります。
「おおきな木」は母性、女性的、大人など。「少年」は男性、子ども、未成熟などをイメージさせますが、単純にどちらが良い悪いという話しでもありません。
最後の一文は「それで木はしあわせでした。」で締めくくられますが、これをハッピーエンドとして捉える読者は少ないでしょう。
ディスカッションで、「おおきな木の全体が描かれるページがない」「木の幹の形や角度が変わり続ける」「年寄りになっても『少年』のまま」など、この本の象徴的なところが話題でした。
男女によって、年代によって、読み方は大きく変わってくると思います。
美しい感情があり、喜びがあり、希望の発芽があるのと同時に、救いのない悲しみがあり、苦い毒があり、静かなあきらめがあります。(「訳者あとがき」より)
初読の衝撃は大きく、何度読み返しても複雑な気持ちになります。大人が読んで、考えさせられる絵本です。